井上綾乃、中田裕二、和泉秀美
収穫機具にみられるエタノール汚染大腸菌の計数と同定およびキャベツとの交差汚染
農機具と農産物の交差汚染を防ぐため、生産梱包場では消毒剤による消毒が行われているが、エタノールなどの消毒剤は消毒剤による細菌の損傷を引き起こす可能性がある。薄層寒天(TAL)法を用いて、1.6%および47%のエタノールを含むアルコール剤の使用によるエタノール損傷大腸菌群の割合を、それぞれキャベツの純粋培養および収穫環境で評価した。Enterobacter cloacae、Escherichia coli、およびE. coli O157:H7の純粋培養では、アルコール剤処理により68~95%の範囲でエタノール損傷細胞が観察された。ナイフ、容器、手袋などの収穫機器にアルコール剤を噴霧したところ、ナイフで検出された大腸菌群全体の60%が損傷したが、容器と手袋では損傷した大腸菌群は検出されなかった。ナイフからの選択培地およびTAL培地上での大腸菌群の分離と同定は、エタノールストレスがEnterobacter amnigenus、E. asburiae、およびE. kobeiに損傷を与えたことを示唆した。アルコール噴霧処理したナイフを使用して収穫した後のキャベツでは、損傷した細菌は検出されなかった。これは、キャベツで見つかった細菌種(11属に属する14種)がナイフ上の細菌種と異なっていたためである。これらの結果は、収穫機からキャベツへの細菌の移動が防止されるか、または消毒剤誘発性の細胞損傷ではなく細菌の死を引き起こす適切な消毒剤が使用される場合、消毒剤によって損傷した大腸菌群はキャベツ上に存在しないことを示している。