市原秀明、奥村正樹、土井崇、稲野達郎、後藤耕一、松本洋子*
現在バイオマスとして廃棄されている乾燥海藻(ノリ、 Porphyra yezoensis )の活用など、バイオマス中の有効成分の医薬品への応用が期待されています。本研究では、悪性黒色腫およびリンパ腫細胞を皮下移植したマウスをモデルとして、乾燥海藻抽出物の抽出物成分の免疫賦活作用を介した癌予防および治療効果を検討しました。海藻抽出物を15日間経口投与したところ、モデルマウスの腫瘍(黒色腫)重量が減少しました。海藻抽出物を経口投与した黒色腫モデルマウスの血清では、IgAおよびIgGレベルの経時的増加が観察されました。海藻抽出物を投与した黒色腫モデルマウスの回腸組織をホモジェナイズした上清溶液では、IgAレベルの増加が観察されました。さらに、海藻エキスを経口投与した悪性黒色腫モデルマウスの回腸組織切片では、免疫染色により複数のIgA陽性細胞が確認されました。また、モデルマウスに海藻エキスを7日間経口投与したところ、皮下リンパ腫腫瘍のサイズが縮小する傾向があり、エキスの治療効果が示唆されました。リンパ腫腫瘍移植の7日前に前処置として海藻エキスをマウスに投与したところ、海藻エキスを投与したマウスでは対照マウスと比較して腫瘍の有意な縮小が観察され、海藻エキスの予防効果が示唆されました。