環境生物学に関する専門家の意見

日本の病院における配膳カートキャスターの衛生管理に関する調査と次亜塩素酸ナトリウム浸漬ガーゼを使用したキャスター消毒の評価

頼岡勝弘、川村明美、大家茂治

日本の病院における配膳カートキャスターの衛生管理に関する調査と次亜塩素酸ナトリウム浸漬ガーゼを使用したキャスター消毒の評価

日本の病院では、配膳カートのキャスターの衛生管理として、次亜塩素酸ナトリウムを浸したガーゼの上で転がして消毒することが一般的ですが、このようなキャスターの消毒の詳細を検討した研究はこれまでありませんでした。そこで、私たちは配膳カートのキャスターの衛生管理に関する調査を行い、次亜塩素酸ナトリウムを浸したガーゼによる消毒の有効性を評価しました。調査の結果、多くの病院が次亜塩素酸ナトリウムを浸したガーゼや次亜塩素酸ナトリウムの噴霧・洗浄法で消毒していることが明らかになりました。これらの方法では、消毒担当者が塩素ガスの刺激臭にさらされ、目や喉の刺激などの健康被害が発生する可能性があり、また、次亜塩素酸ナトリウムを浸したガーゼ中の有効塩素濃度が短期間で急激に低下することもわかりました。これらの調査結果は、次亜塩素酸ナトリウムに浸したガーゼの使用は、確実な消毒効果が得られず、次亜塩素酸ナトリウムに浸したガーゼからの塩素にさらされた従業員に健康被害をもたらすため、配膳カートのキャスターの衛生管理には不十分かつ不適切であることを示唆しています。