ナノマテリアルと分子ナノテクノロジーのジャーナル

pDNA複合体粒子サイズが遺伝子発現に与える影響：in vitro実験とin vivo実験の違い

伊藤智子、江里口正純、小山由之

pDNA複合体粒子サイズが遺伝子発現に与える影響：in vitro実験とin vivo実験の違い

我々は、負の表面電荷を持ち、生体成分との非特異的相互作用を低減した非常に小さな（70-150 nm）プラスミド/ポリエチレンイミン/ヒアルロン酸（HA）三元複合体からなる新しい遺伝子導入システムを開発した。このシステムは、生体内で高い遺伝子発現効率を示した。しかし、in vitro 導入実験では、このような小さな三元複合体は、従来の DNA/ポリカチオン複合体よりもかなり低い遺伝子発現を示すことが多かった。本研究では、in vitro と in vivo 導入の違いに焦点を当て、複合体粒子サイズが遺伝子発現効率に及ぼす影響を調査した。DNA 複合体粒子のサイズは、混合溶液の濃度に強く依存し、濃度が高いほど粒子が大きくなった。in vitro 導入に関しては、DNA/ポリエチレンイミン二元複合体は、そのサイズに関係なく、静電気引力によって容易に細胞に結合した。小さな二元複合体粒子は、おそらくその高い内部化効率のために、大きな粒子よりも高い遺伝子発現を示した。一方、負の表面電荷を持つ小さな DNA/ポリエチレンイミン/HA 三元複合体は、細胞から離れた培地中に分散し続け、より大きなものよりも in vitro 遺伝子導入効率が低いことがわかった。静脈注射後の in vivo 導入に関しては、体内に分布して腫瘍に蓄積するためには、非特異的相互作用の低減と複合体粒子の小さなサイズが求められるため、小さな三元複合体のみが高い遺伝子発現を示した。in vivo 導入用ベクターの優劣は、in vitro 導入の結果によって常に正確に予測できるわけではない。